日本の悲劇の根源(3)

日本が「帝国」の周辺であるのか、あるいは準周辺(間接的周辺)であるのか、という問題はなかなか悩ましい。それは日本(文化)の相対的な自立性をどの程度認めるのか、という問題とも関係してくるので、デリケートな問題となってくるからである。 総じて、…

日本の悲劇の根源(2)

日本について考えるのは実は厄介なことである。先にも書いたように外来の文化・文明は二重の構造をとって受容され、本来の一義的な理念や意味が変容されていく。そのような受容は、日本の置かれた地政学的な位置から来ていると考えるしかない。 この日本の地…

日本の悲劇の根源

日本の直面している問題の多くは、日本の構造的な二重性に根拠を持っている。どういうことかと言うと、憲法では「非戦」を唱えつつ、現実では自衛隊というまぎれもない軍隊を保有したり、また中国・韓国に対して謝罪を繰り返しつつ、その裏ではヘイトスピー…

憲法へのクーデターの後に

国家もまた人間と同様に性格を持ち、キャラクターを持ち、過去史を持って存在している。過去の歴史をどう把握して、それを未来の行動にどのように反映するのか、という所にその国家の個性や性格、そして理念は現れる。通常は、憲法とはそのような国家の性格…

日本の学生たちへの不満

以前、韓国で教えた時、ある映画を見せて感想を聞いたことがあった。その時、女子大学院生があまりに感情移入してしまって、泣きながら感想を述べ続けたことがある。もちろん「かわいそう」とか「健気だ」などという紋切り型の感想ではなく、誰それが、人物…

奇妙な風景

今日、日本と北朝鮮とが拉致被害者の再調査で合意したとのニュースがあった。北朝鮮が日本側の要求をのむ形での合意で、それに伴って日本の制裁措置を一部解除し、さらに人道支援や国交正常化の議論の可能性にまで言及したものである。 外交的な利害が北と日…

小保方さん報道について

小保方さんのスタップ細胞をめぐる報道については、初めから何か行きすぎで不快なものを感じていたが、その過熱ぶりによってむしろ現代の「病理」を見せるよい症例だと思うようになってきた。この小保方さん報道は、まさに現代日本の無意識的な「病理」を端…

記憶をし続けること

NHKスペシャルでで、1980年に新宿であったバス放火事件の被害者女性のその後を追った番組「聞いてほしい心の叫びを バス放火事件 被害者の34年」をやっていて、かなりの衝撃を受けた。 この事件自体を知らなかった(あるいは忘れていた)ということも一つ…

春の報せ

と言っても桜の開花のことではない。某文芸誌新人賞からの結果の報せが届いたと言う次第。結果は残念ながら選考には落ちましたというものだった。しばらく落ち込んだものの、まあ最終選考にまで残ったということで自ら慰めることにする。 春のよい報せだった…

新年度開始

今日から新年度。今年は講座代表となり、新入生の指導学生としてロシア人学生、日本人学生の2名が入る。今いる指導学生は、韓国人1名、中国人1名なので、ますます国際的になってきた。去年修了した韓国人の李敬淑さんが、今日から宮城学院女子大学の講師…

ケンブリッジの選んだ死ぬまでに読みたい30冊

ケンブリッジニュースで、死ぬまでに読みたい30冊のリストを上げていた。興味深いのでリンクをはっておく。 http://www.cambridge-news.co.uk/Whats-on-leisure/Books/30-Cambridge-books-to-read-before-you-die-20140306145355.htm ちなみに JG Ballard - …

『明日、ママがいない』

水曜10時からのドラマ『明日、ママがいない』(第8回)を見て、深く情動を動かされた。おそらくドラマを見て、これほど情動を動かされたのは久しぶりのことだ。 来週の第9回が最終回となるので、これまでの様々な登場人物たちのエピソードや葛藤が収束に向か…

未来的な社会としてのオーストラリア

先日、5泊6日の日程でオーストラリア・シドニーを訪れてきた。訪問の模様はいつか写真などを交えて整理したいものだが、とにかく印象的だったのは多文化的・多人種的なシドニーの街のありようだった。オーストラリアが以前の白人中心主義的な路線から多文化…

ソチオリンピック終了

昨日の夜、閉会式が行われて17日間に渡ったソチオリンピックが終了した。今回のオリンピックは、新学期からロシアの留学生が来ることもあって、かなり集中して見た。後半の1週間はオーストラリアへの出張が入ってあまり見られなかった(オーストラリアではあ…

オーストラリア訪問近づく

この2月中旬にオーストラリアに訪問の予定である。3年前の東日本大震災の時に予定していたのが、震災のために行けなくなったもののリベンジという意味合いである。ちょうど2011年3月13日の訪問の予定だったので、当時は悔しい思いをした。震災当日、仙台市内…

第2次大戦の正しい終わらせ方

NHKのラジオ深夜便で元国連大学事務局長の伊勢桃代さんのお話を聞き、たいへんに感銘を受けた。日本語でも格調の高く、志のある言葉を語れる方がいるということ、そのことを知るだけでもどれだけ勇気を与えられることだろう。国連大学で勤務した経験をもとに…

10時間勤務

今日は朝の9時出勤で、10時間くらいぶっ続けで仕事をした。こんな日はめったにないのだが、偶然で3人分の論文審査と全学授業の期末試験とが重なったので、そういうことになった次第。さすがに終わるとへろへろになったけれど、なぜか疲労感よりはやり終えた…

清朝末期化する日本

4,5か月も間が空いてしまった。昨年の後期に入って加速度的に忙しくなってしまったため。だんだん余裕がなくなってきている。 ところで、このところの慰安婦問題や尖閣問題、靖国参拝をめぐる東アジアの軋轢に、とても心寒く、いたたまれない気持ちを抱いて…

オリンピック開催地決定

オリンピックの開催地決定が今日行われる。今、第1次投票が行われて、イスタンブールと東京とが決選投票に進むことに決定したところである。テレビではプレゼンテーションから放送していたので、東京のプレゼンテーションも見ていたのだが、かなりヒューマ…

 「松よ、松よ、青い松よ」(솔아 솔아 푸르른 솔아)

ようやく2週間にも渡るレポート採点を終えて、成績を提出する。これで一段落して次の仕事に取りかからなくてはいけないのだが、色々と気持ちが沈むことが多く、元気が出ない。 こんな時にはまず温泉に入って、気分を変えるに勝るものはない。ということで、…

『トガニ』

レポート採点に追われている合間を縫って『トガニ』を見る。コン・ジヨンのベストセラー小説を映画化したもので、だいたいの粗筋は知っていたもののその重さに圧倒された。 霧津という地方都市にある聴覚障害者の学校を舞台にして、そこの校長・行政室長・教…

参議院選挙

参議院選挙。気乗りはしなかった(積極的に応援したい人はいなかった)ものの、とにかく自民党独走を食い止めたい気持ちで投票に行ってくる。民主党候補に入れたのだが、接戦に競り負けて落選。比例区もみどりの風に入れるもののあえなく落選。自民党の独走…

蘇盈之Soo Wincci「不應該勇敢」など

ちょうど1か月ぶりで書く。1か月どうしていたかと言うと、授業の合間に音楽共有サイト、画像共有サイト、動画共有サイトなどを見ながら暮らしていた。要するに趣味の世界にはまって暮らしていたわけである。 年甲斐もなくはまってしまったが、一つよく分かっ…

リンジー・スターリング『Crystallize』

アメリカの踊るヴァイオリニスト、リンジー・スターリングの曲『Crystallize』。雪原の中でバイオリンを弾く姿は幻想的で、You Tubeでの視聴回数が6000万回を越えて、2012年のトップ8位に入ったのだそうである。 この曲がとても印象的だったのは、その演奏の…

NHKスペシャル 尼崎殺人死体遺棄事件

NHKで未解決事件の連続特集番組を組んでいて、そのFile No.3として尼崎殺人死体遺棄事件をやっていて思わず見てしまう。例の角田美代子容疑者による複数の家族が崩壊に追い込まれ、暴力や虐待の末に7人が死亡、3人が行方不明となった事件である。 この番組を…

日本のサービス過剰について

今日、たまたまシンガポール在住の日本人の書いた文章を読んだのだが、そこで筆者はシンガポールは経済的には日本以上の先進都市国家であるのにもかかわらず、サービス業は今一つだということを書いていた。三ツ星ホテルなどのサービスですら、今一つで満足…

備忘のために

日本に帰国したのはもう9年前のことになるが、その時のことは実はあまり思い出したくない記憶である。帰国してすぐに混乱状態に陥り、しばらく(というよりも数年単位で)その混乱状態が続いたからである。帰国とは元いた土地に戻ることであるために、すぐ再…

『セデック・バレ』第1部

ようやく念願かなって『セデック・バレ』の第1部を見てくる。言うまでもないが、台湾の霧社事件という原住民による日本人支配への反乱事件を題材としたものである。2011年に台湾で上映され大きな話題となったものだが、日本での上映がようやく今年になって行…

情けないニュース

この数日、情けないニュースばかりが続き、たいへん気が重い。橋本徹氏が慰安婦問題について発言し、あろうことかアメリカに対して日本の風俗を活用するようにとお説教する始末。聞くのも見るのももう嫌なのだが、どうしてもこの「現象」については考えざる…

映画『アンナ・カレーニナ』を見てブロックバスター映画について考えた

久しぶりの更新。 なかなか新学期が始まって更新がままならない。雑用が多いこともあるし、今学期は授業をパワーポイントですることに決意したので、以前よりも授業準備に手間がかかるのである。パワーポイントを作ると、一応授業のストーリーを考えたり、映…