映画

『トガニ』

レポート採点に追われている合間を縫って『トガニ』を見る。コン・ジヨンのベストセラー小説を映画化したもので、だいたいの粗筋は知っていたもののその重さに圧倒された。 霧津という地方都市にある聴覚障害者の学校を舞台にして、そこの校長・行政室長・教…

『セデック・バレ』第1部

ようやく念願かなって『セデック・バレ』の第1部を見てくる。言うまでもないが、台湾の霧社事件という原住民による日本人支配への反乱事件を題材としたものである。2011年に台湾で上映され大きな話題となったものだが、日本での上映がようやく今年になって行…

ドキュメンタリー映画『ぼくたちは見た』(古居みずえ)

上映会があって、古居みずえ監督のパレスチナの少年少女たちを扱ったドキュメンタリー映画『ぼくたちは見た』を見てきた。かなり前からぜひ見ておきたいと思っていた映画だったが、期待にたがわずとてもすばらしい映画だった。 扱われる場面は、2008年の暮れ…

塚本晋也『鉄男 THE BULLET MAN』

この世界観は単純だし、『AKIRA』の線上にあることがすぐに分かりそういう意味では感心しなかった。 ただ、そのような単純な世界観をもって映画的世界を構築し、突破したことはすごいことだと思われた。 『AKIRA』が持っていた土着性のようなもの、あるいは…

園子温『愛のむきだし』

あまり感心はしなかったものの、現代性というものを強く感じた。ばらばらな素材やディテールを強引につなぎ合せパッチワークして、そこにともかくも「現代性」を描き得ている。そこには監督/脚本家である園子温の強い意志のようなものは感じられる。 この映…

園子温『冷たい熱帯魚』

遅ればせながら園子温映画を見る。噂にたがわず完成度の高い映画で一日じゅう余韻に浸っていた。というよりも衝撃の中にあった。 映画の扱う事件が猟奇的な連続殺人事件であるので、肉体を切り刻む場面などの衝撃的なシーンの印象が強くて身体的な戦慄感のな…

アン・リー『ラスト・コーション』

アン・リー監督『ラスト・コーション』を見る。158分の大作だが、少しも冗長でなく時間を感じさせない出来である。1940年代上海の街並みを再現した大規模なセットやエキストラ、小道具なども素晴らしく、堪能する。 この映画は、工作員を主人公とした工作員…

ナ・ホンジン監督『チェイサー』(나홍진 감독 『추격자』)

また正月から苦しい映画を見てしまう。とてもとても見ているのが苦しい映画であった。最近の韓国映画がその表現の強度をどんどんと上げて、まさに息をつかせないような人間の原初的な感情を刺激するものにまで「進化」していることをまざまざと示す映画であ…

『ベンジャミン・バトン』

テレビの正月映画(?)で『ベンジャミン・バトン』をやっていて、見てしまう。2回目となる。この映画の主題は時間であって、主人公が時間を逆にたどることによって、人生の中の時間の持つ意味がとても劇的にあぶりだされている。 元々昔から時間を主題とし…

小津安二郎『東京暮色』(1957)

驚くべき作品である。映画がこのように重く暗い主題を展開しうることを再認識させてくれる。ここにあるのは例えば夏目漱石が『門』の中で展開したような主題である。それは直接の原因を越えて、人間の原罪とでも言うしかないような実存的な苦悩の場面へとつ…

チャンサンコンメ『おお!夢の国』(장산곶매 『오! 꿈의 나라』)

さっそく昨日届いたチャンサンコンメの『おお!夢の国』を見てみた。1989年作品。1989年と言えば、ちょうど私が初めて光州に日本語教師として赴任した年だ。まさにその年に、光州事件を初めて本格的に扱ったこの映画が作られたことは、とても感慨深い。 1989…

ジョン・スイル監督『ヒマラヤ、風のとどまる所』(전수일 감독『히말라야, 바람이 머무는 곳』

この映画は、特別な映画だ。映像が思索しているような映画。ひどく思索的な映画だ。普通の映画鑑賞のコードを持ってみると、単調でストーリーの起伏もないし、俳優の演技も淡々としていて手持ち無沙汰になる。 しかしだんだんとこの映画は思索を促しているの…

小津安二郎『宗方姉妹』

最近、小津安二郎映画が面白くなってきた。それもどちらかと言うと世評の高くない、失敗作と呼ばれている作品の方が面白いのである。例えば『風の中の牝鶏』とか『宗方姉妹』のような作品である。『秋刀魚の味』もいい。 何がいいのかというと、〈戦後〉とい…

忠武路の上を飛ぶチャンサンコンメ(長山岬の鷹)

1980年代から90年代の始めの韓国で活躍した独立映画製作集団チャンサンコンメについての資料です。cine21から。 http://www.hani.co.kr/c21/data/L980817/1qb08h04.html 「チャンサンコンメに関する話はすでに現代の伝説である。作家・ファン・ソギョンの民…

キム・ジョン監督『ギョン』(김정감독 『경』)

モウ一つキム・ソヨン氏関係。キム・ソヨン氏は実は韓国映画アカデミーの1期生であって、実作も作っているとのことだ。2009年にキム・ジョンという名前で、『ギョン』という商業映画を作っている。「ギョン」とは、登場する女性姉妹の名前でもあるのだが、「…

ポン・ジュノ『ほえる犬は噛まない』(봉준호; 『플란다스의 개』)

ポン・ジュノの長編第1作『ほえる犬は噛まない』。ポン・ジュノについて少し考えをまとめておくために、見直してみる。改めて見ても、やっぱりポン・ジュノは才能の溢れる監督だと強く思う。 スタイルが第1作から確立していること。軽いタッチ。韓国人の自己…

キム・ソヨン「アクションのためのアクションでなかったらよかった『The Good, The Bad, The Weird』」

http://www.cine21.com/do/article/article/typeDispatcher?mag_id=52383&page=1&menu=&keyword=&sdate=&edate=&reporter= キム・ソヨンの『The Good, The Bad, The Weird』評。韓国の「満州ウェスタン」の歴史的な系譜の上にこの映画を位置づけているが、19…

キム・ジウン監督『The Good, The Bad, The Weird』

1、「満州」を舞台としていることの意味 2、3人の男たちの持つコード 3、冒険活劇――ジャンルの混交性 4、The weird――奇妙な奴は生き残る もしもこの『The Good, The Bad, The Weird』に関して文章を書くならば以上のようなことを書くだろう。この映画は…

ヤン・イクチュン監督『息もできない』

久しぶりに圧倒的な映画を観た。この圧倒的な映画的パワーをどう表現したらいいものだろう。何か原初的な表現したい欲望が、洗練された映画的なコードを通すことなしに、そのままの原初的な熱と質感をもって奇跡的に映像となったような映画、とでも言おうか。…

ブンミおじさんの森

今日は2010年のカンヌ映画祭パルムドールを取った『ブンミおじさんの森』を見てきた。アビチャッポン・ウィーラセタクン監督、イギリス・タイ・ドイツ・フランス・スペイン合作。 死期を間近に控えたブンミおじさんの前に、死別した妻や行方不明となっていた…

ドキュメンタリー映画『無常素描』

早くも東日本大震災を扱ったドキュメンタリー映画が公開されています。昨日から東京オーディトリウム渋谷にて。その後、大阪、名古屋、神戸などで公開の予定。仙台は未定のようです。

台湾で活躍する日本人・田中千絵インタビュー

http://www.taipeinavi.com/special/5022948 『海角七号』の主演を演じてブレイク、そして『セデック・バレ』にも出演するようです。

台湾映画セデック・バレ

2008年に大ヒットした『海角七号』の監督・魏徳聖監督の次の作品が、霧社事件を扱った『セデック・バレ』。ビビアン・スー主演で、今年中に公開予定とのこと。霧社事件は、台湾の原住民(タイヤル族)による最大の抗日蜂起事件で、日本人140人ほどが犠牲とな…

真!韓国映画祭2011

東京のK's cinemaで。5月28日から6月17日まで。 http://www.ks-cinema.com/movie/korean-cinema-fes.html 行ってみたい!