留学生を5人確保してくること

 
 昨日、かつての韓国時代の同僚であった友人から電話があった。この春に関西地方にある私立の短大に就職が決まってようやく初めての新学期を迎えたところである。何だろうと思ったら、新学期そうそう学長と副学長とに呼ばれての面談があったのだと言う。その面談でこの9月までに韓国からの留学生の入学者を5人以上確保してくること、という強い要請をされたのたそうだ。
 
 短大が留学生を頼みにしていることは知っているし体験もしているのだが、9月までに5人は大変そうだと思って話を聞くと、思ったよりも厳しい状況らしい。学費生活費などの補助はないし、寮もないので民間のアパートを探さなければならないし、短大なものだから日本語・日本文化を学べる学科はなく福祉関係・幼児教育関係などの学科しかないのだという。「ないないづくし」だと彼は嘆いていた。
 
 彼の方から要求を出して、2年の短大課程を終わったら有名大学への編入が可能となること、という条件を出したそうだが、それでも身銭を切って短大に留学して幼児教育や福祉を学ぼうとする学生がどのくらいいるかはなはだ心許ない。というかほとんど期待できないのではないだろうか。提携大学で学費援助や生活面での寮生活などが保証されていれば、何とかなるだろうけれど、それでも5人は難しそうだ。
 
 韓国へのリクルートに行くにしても、活動費が出るわけでもなく私費で行かなければならないとのこと。本当に「ないないづくし」である。というか、ちょっと理不尽な要求である気がする。自分の食い扶持を自分で見つけてこいとでもいうことだろうか。短大の経営が苦しいのはどこも同じだが、それでもちょっと理不尽な気がする。
 
 昨日の電話の時点ではそのように同情しつつも半ば他人事だと思って聞いていたのだが、実は今日会議の席で現在の自分のいる研究科の現状を聞いて呆れた。まったく同じではないか。志願者が減って、それに震災の追い打ちもあって、過去最低のレベルまで落ち込んでいること。この秋の入試ではやれることを全部やって志願者を確保しなければならないこと、などを科長が力説しているのだった。
 
 こちらの研究科も留学生が多く、留学生頼みの部分があるから、そのうちもしかしたら留学生を確保してくること、などという要請が出てこないとも限らない。その意味でまったく彼の短大と状況は変わらないのである。
 
 そのうち営業セールスのように教員にも学生確保のノルマがかけられる日が来ないとも限らない。成績のいい教員が大きな顔をして、学生を確保できない教員は肩身が狭い、などという日がもしかしたら来るかもしれないのである。国から教育まで、何とも世知辛いことである。