悲しい夜に

 
 悲しい夜には詩を作ってみる
 星と風が記憶を痛ませ
 はるかな昔の光景をはためかせるように
 何日も何日も食べるものもなく
 血さえもひからびてしまった心に
 一滴の水をしたたらせるように
 多くのことを経験しすでに終わりを望む地点に
 近づいてきたことを
 いたわってくれる言葉を探すように
 そんな詩を作ってみる
 
 ただ奇跡はまだ残されていて
 宝石のように夜の闇を照らすのだ
 愛おしい言葉を運びながら
 乏しい道にも美しい雨の降った午後があったことを思い出させてくれる
 
 思いを遠くへ置いてきてしまったために
 もうここには何も残ってはいない
 悲しいとか寂しいとかそういった感情さえも
 あるべきところを失って彷徨っている
 
 空虚な場所で子供を失ってしまった母親のように
 愛情が血を流している
 まだ戦わなければならないと叱咤するのだが
 目は見開かれたまま 映像を結ばない
 
 ただ化石となってしまえばいいのに
 生きながら 身悶える姿のまま
 そのまま失われた地層にはさまれ
 永遠に燃え尽きることのない炎として残ればいいのに