弟の転勤

 
 弟がいて、現在自動車メーカーでエンジニアをしている。2年前に新しく宮城県の北部に工場を作って、震災の少し前に本格稼働して、出荷し始めたところで震災が起きたのだが、ともあれそんなわけで神奈川県から単身で仙台に引っ越してきたのが2年前位のことになる。
 
 そんなわけで、もう仙台に定住するものかと思っていたのだが、あにはからんや、急にまた転勤の命令が出て静岡県に引っ越すことになったと言う。メーカーが3社で統合したのに伴う異動なのだそうだ。神奈川から宮城に工場ができて引っ越すにあたって、弟は家族を残して単身でやってきたが、家を処分して新たに宮城県に家を構えた(つまりローンを抱えた)人たちも多かったと言う。それなのにまた2年で引っ越しで、大変だと言っていた。
 
 会社はそんな事情には配慮してくれないもののようで、ローンが二重三重になるケースもあるらしい。いやなら辞めてもいいということだろう。企業社会とは非情なものである。
 
 弟はそれ以前にも海外の工場をあちこちめぐっていたので、単身のホテル生活・アパート生活は長いのだが、それでもいい年をしてあちこち廻らざるをえない境遇には同情してしまう。また静岡で一から人間関係を築くのもたいへんだろうに。
 
 そんなわけで、今日は両親と弟とうちの家族とで送別会を行った。両親がどこか寂しそうだったが、本人は寅さんみたいなものでこれから引っ越し荷物をまとめて金曜日に送るのだと飄々としていた。アパートにはほとんど家具はないので、荷物をまとめるのも簡単なのだとのこと。