やっと週末

 
 今日も授業と雑用の山をこなした一日。帰るとぐったりしてしまい、あとまた論文査読と科研費の書類書きの仕事があるのだけれど、やる気が出ない。
 
 ところで、今日の授業はとても興味深かったのでその報告。
 
 今年の後期は「東アジアのマイノリティを扱った映画」というテーマでの授業を持っているのだが、そこで最初に各国のマイノリティ事情の説明をしている。今日は中国と韓国のマイノリティ事情についての説明だったのだが、中国の一般的な少数民族事情の説明のあとで、受講している朝鮮族の女子学生が朝鮮族についての説明を担当してくれた。
 
 ちなみに受講生は15,6名だが、日本人が3名、韓国人が1名、ほかは中国人というメンバー。その中国人の中で、唯一彼女だけが朝鮮族なので、話を振ろうと思っていたのだが、その前に彼女が自発的に前に出て説明を始めたのだ。それもプリントも作ってきてくれた。
 
 興味深かったのは、彼女がビザの問題に言及して、大学を卒業すると自動的に韓国のF4ビザ(在外同胞ビザ)をもらえて、韓国との間に行ったり来たり自由にできるようになること、そのため海外に行く朝鮮族の若者が多いこと、彼女自身も韓国の大学で学んだことなどを話した後で、「自分自身のアイデンティティはどちらにあるのですか?」という質問を受けてからだった。
 
 彼女はとても答えに困る質問だと前置きして、国籍は中国で、意識としては韓国でもある、というような話をした。また、それとは矛盾するのだが、韓国に行っても待遇は外国人である、というような話をした。それをめぐって、特に漢族の中国人が一斉に(と見えた)不思議で理解できないというような反応を見せはじめたのである。
 
 漢族の中国人の理解だと、国籍と民族性とは別のもので、アメリカに住みアメリカの国籍を持っていても、中国系住民は中国人だという理解のようだった。その論理とは少し矛盾するような気もするが、彼女は中国人としてのアイデンティティを持つべきだというように言っているようにも聞こえた。何にせよアイデンティティの問題に対して、とても合理的で国籍は本質に関係ないというような理解を見せていたのが印象的だった。その立場からすると、民族的な本質についてやアイデンティティの問題について、あまり悩む必要はないというような雰囲気だった。韓国人や日本人の国籍と民族の考え方とは少し違った理解のように思えたがどうなのだろう。
 
 ただ、私の理解がちがっていて、マジョリティとマイノリティとの意識の違い、ということだったのかもしれない。どこの国でもマジョリティはアイデンティティの問題について悩む必要はないのだから。